[PHP]hash_algos関数完全ガイド:利用可能なハッシュアルゴリズムを把握しよう

PHP

こんにちは!前回は PHP の hash 関数について解説しましたが、今回はその関連関数である hash_algos() 関数に焦点を当てて詳しく解説していきます。この関数はハッシュ化を行う際にどのようなアルゴリズムが利用できるのかを知るための重要な関数です。

hash_algos 関数とは?

hash_algos() 関数は、PHP の現在の環境で利用可能なすべてのハッシュアルゴリズムの名前を配列として返す関数です。この関数は引数を取らず、非常にシンプルです。

array hash_algos ( void )

戻り値

現在利用可能なすべてのハッシュアルゴリズム名を含む文字列の配列を返します。

基本的な使い方

hash_algos() 関数の基本的な使い方は非常にシンプルです:

<?php
// 利用可能なハッシュアルゴリズムの一覧を取得
$available_algos = hash_algos();

// 結果を表示
echo "現在のPHP環境で利用可能なハッシュアルゴリズム:<br>";
foreach ($available_algos as $algo) {
    echo "- " . $algo . "<br>";
}

// 利用可能なアルゴリズムの総数を表示
echo "<br>合計: " . count($available_algos) . "種類のアルゴリズムが利用可能です。";
?>

この例を実行すると、現在の PHP 環境でサポートされているすべてのハッシュアルゴリズムとその総数が表示されます。

実行環境による違い

PHP バージョンやコンパイル時のオプション、使用しているシステムライブラリによって、利用可能なハッシュアルゴリズムは異なる場合があります。例えば、PHP 7.4 と PHP 8.1 では利用可能なアルゴリズムが異なる可能性があります。

一般的な PHP 環境では、以下のようなアルゴリズムが利用可能です:

  • md2, md4, md5
  • sha1, sha224, sha256, sha384, sha512
  • ripemd128, ripemd160, ripemd256, ripemd320
  • whirlpool
  • tiger128,3, tiger160,3, tiger192,3, tiger128,4, tiger160,4, tiger192,4
  • snefru, snefru256
  • gost, gost-crypto
  • adler32, crc32, crc32b, crc32c
  • fnv1a32, fnv1a64, fnv132, fnv164
  • joaat
  • haval128,3, haval160,3, haval192,3, haval224,3, haval256,3
  • haval128,4, haval160,4, haval192,4, haval224,4, haval256,4
  • haval128,5, haval160,5, haval192,5, haval224,5, haval256,5

PHP 8.1 以降では、さらに以下のようなアルゴリズムも利用可能になっている場合があります:

  • sha3-224, sha3-256, sha3-384, sha3-512
  • blake2b512, blake2s256

実用例1:アルゴリズムの存在確認

特定のハッシュアルゴリズムが現在の環境で利用可能かどうかを確認する例:

<?php
function is_hash_algo_available($algorithm) {
    $available_algos = hash_algos();
    
    if (in_array($algorithm, $available_algos)) {
        return true;
    } else {
        return false;
    }
}

// 使用例
$algorithms_to_check = ["md5", "sha256", "blake2b512", "sha3-256"];

foreach ($algorithms_to_check as $algo) {
    if (is_hash_algo_available($algo)) {
        echo $algo . " は利用可能です。<br>";
    } else {
        echo $algo . " は利用できません。<br>";
    }
}
?>

実用例2:利用可能なアルゴリズムの情報表示

各アルゴリズムのハッシュ値の長さや処理速度を表示する例:

<?php
function get_hash_info() {
    $test_data = str_repeat("A", 10000); // テスト用の入力データ
    $algos = hash_algos();
    $info = [];
    
    foreach ($algos as $algo) {
        // 処理時間の計測開始
        $start_time = microtime(true);
        
        // ハッシュ値を計算
        $hash = hash($algo, $test_data);
        
        // 処理時間の計測終了
        $end_time = microtime(true);
        $time_taken = ($end_time - $start_time) * 1000; // ミリ秒に変換
        
        // 情報を収集
        $info[$algo] = [
            'hash_length' => strlen($hash),
            'bits' => strlen($hash) * 4, // 16進数の各文字は4ビットを表現
            'time_ms' => $time_taken
        ];
    }
    
    return $info;
}

// 情報を取得して表示
$hash_info = get_hash_info();

echo "<table border='1'>
        <tr>
            <th>アルゴリズム</th>
            <th>ハッシュ長(文字)</th>
            <th>ビット数</th>
            <th>処理時間(ms)</th>
        </tr>";

foreach ($hash_info as $algo => $data) {
    echo "<tr>
            <td>{$algo}</td>
            <td>{$data['hash_length']}</td>
            <td>{$data['bits']}</td>
            <td>" . number_format($data['time_ms'], 4) . "</td>
          </tr>";
}

echo "</table>";
?>

実用例3:セキュリティレベルによるアルゴリズム選択

セキュリティ要件に基づいて適切なハッシュアルゴリズムを選択する例:

<?php
function get_recommended_hash_algo($security_level = 'medium') {
    $available_algos = hash_algos();
    
    // セキュリティレベルに応じたアルゴリズム候補
    $recommended = [
        'low' => ['md5', 'sha1', 'crc32'], // 非セキュリティ用途向け
        'medium' => ['sha256', 'ripemd160'], // 一般的なセキュリティ用途向け
        'high' => ['sha384', 'sha512', 'whirlpool'], // 高度なセキュリティ用途向け
        'very_high' => ['sha3-512', 'blake2b512'] // 最高レベルのセキュリティ用途向け
    ];
    
    // 指定されたセキュリティレベルの候補から、利用可能なものを探す
    if (isset($recommended[$security_level])) {
        foreach ($recommended[$security_level] as $algo) {
            if (in_array($algo, $available_algos)) {
                return $algo;
            }
        }
    }
    
    // 候補が見つからない場合はフォールバック
    return in_array('sha256', $available_algos) ? 'sha256' : 'md5';
}

// 使用例
$security_levels = ['low', 'medium', 'high', 'very_high'];

echo "セキュリティレベル別の推奨アルゴリズム:<br>";
foreach ($security_levels as $level) {
    $recommended_algo = get_recommended_hash_algo($level);
    echo "セキュリティレベル {$level}: {$recommended_algo}<br>";
}
?>

PHPバージョンによる利用可能アルゴリズムの変遷

PHP のバージョンによって、利用可能なハッシュアルゴリズムは徐々に増えてきました。主な変更履歴を紹介します:

  • PHP 5.1.2: hash 関数と hash_algos() 関数が導入され、基本的なアルゴリズム(MD5, SHA1など)がサポートされました。
  • PHP 5.3.0: Salsa10, Salsa20 などの追加アルゴリズムがサポートされました。
  • PHP 7.1.0: hash_equals() 関数が導入され、タイミング攻撃に強いハッシュ比較が可能になりました。
  • PHP 7.2.0: Argon2i, Argon2id がパスワードハッシュアルゴリズムとして追加されました。
  • PHP 8.1.0: SHA3 ファミリー(SHA3-224, SHA3-256, SHA3-384, SHA3-512)と BLAKE2(blake2b512, blake2s256)がサポートされました。

アルゴリズム選択のガイドライン

異なるハッシュアルゴリズムをどのような場面で使うべきかについてのガイドラインを紹介します:

  1. 高速なハッシュ化が必要な場合(非セキュリティ用途)
    • MD5, CRC32, ADLER32 など
    • 例:データキャッシュのキー生成、データ整合性のチェック(ただし改ざん対策には不適)
  2. 一般的なセキュリティ用途
    • SHA-256, RIPEMD-160 など
    • 例:ファイルの整合性検証、デジタル署名
  3. 高度なセキュリティ要件
    • SHA-512, Whirlpool, SHA3-256 など
    • 例:重要なファイルの検証、高機密情報の処理
  4. 最高レベルのセキュリティ要件
    • SHA3-512, BLAKE2B-512 など
    • 例:暗号通貨、機密性の高い政府システム
  5. パスワード保存専用
    • ハッシュ関数よりも password_hash() 関数を使用し、bcrypt, Argon2id などのアルゴリズムを選択

注意点とベストプラクティス

  1. 常に最新情報を確認する: 暗号アルゴリズムの安全性評価は時間とともに変化します。定期的に最新の推奨事項を確認しましょう。
  2. 用途に合ったアルゴリズムを選択する: セキュリティ要件と処理速度のバランスを考慮し、適切なアルゴリズムを選びましょう。
  3. 環境依存を考慮するhash_algos() を使って実行環境で実際に利用可能なアルゴリズムを確認し、フォールバック機構を実装することをお勧めします。
  4. 非推奨アルゴリズムに注意: MD5、SHA1 などの古いアルゴリズムは、衝突耐性に問題があるため、セキュリティ用途では使用を避けましょう。

まとめ

hash_algos() 関数は、PHP で利用可能なハッシュアルゴリズムを知るための重要なツールです。この関数を活用することで、実行環境に依存せずに適切なアルゴリズムを選択できるようになります。

セキュリティ要件、処理速度、互換性などを考慮しながら、アプリケーションに最適なハッシュアルゴリズムを選ぶことが重要です。特に、セキュリティが重要な場面では、最新の推奨アルゴリズムを選択し、定期的に見直すことをお忘れなく。

次回もPHPのセキュリティ機能について掘り下げていきますので、ぜひお楽しみに!

タイトルとURLをコピーしました