[PHP]余りを正確に求める:gmp_div_r 関数の完全ガイド

PHP

はじめに

PHPで非常に大きな整数を扱う場面では、標準の整数演算では限界があります。GMP(GNU Multiple Precision)拡張モジュールは、そんな状況を解決するための強力なツールです。今回は、多倍長整数の除算における「余り」を取得するための関数 gmp_div_r について詳しく解説します。

gmp_div_r 関数とは?

gmp_div_r 関数は、GMP ライブラリにおける除算関数の一つで、除算の結果の「余り」部分のみを返します。gmp_div_q が商を返すのに対し、gmp_div_r は余りだけを返す点が特徴です。

基本的な構文

gmp_div_r(GMP $num1, GMP $num2, int $rounding_mode = GMP_ROUND_ZERO): GMP
  • $num1: 被除数(割られる数)
  • $num2: 除数(割る数)
  • $rounding_mode: 丸めモード(オプション、デフォルトは GMP_ROUND_ZERO)
  • 戻り値: 余りを表す GMP オブジェクト

丸めモードと余りの関係

gmp_div_r の結果は、丸めモードによって異なる場合があります。数学的には、商(q)と余り(r)の関係は次の式で表されます:

num1 = num2 * q + r かつ 0 ≤ |r| < |num2|

各丸めモードでの余りの計算方法は以下の通りです:

  • GMP_ROUND_ZERO: 商を0方向に切り捨てたときの余り(標準的な余り計算)
  • GMP_ROUND_PLUSINF: 商を正の無限大方向に切り上げたときの余り
  • GMP_ROUND_MINUSINF: 商を負の無限大方向に切り下げたときの余り

使用例

基本的な使い方

<?php
// 17を5で割った余りを求める
$a = gmp_init("17");
$b = gmp_init("5");
$remainder = gmp_div_r($a, $b);

echo gmp_strval($remainder); // 出力: 2
?>

丸めモードによる違いの例

<?php
// -17を5で割った余りを、異なる丸めモードで確認
$a = gmp_init("-17");
$b = gmp_init("5");

// ゼロ方向への切り捨て
$remainder1 = gmp_div_r($a, $b, GMP_ROUND_ZERO);
echo "GMP_ROUND_ZERO: " . gmp_strval($remainder1) . "\n";

// 正の無限大方向への切り上げ
$remainder2 = gmp_div_r($a, $b, GMP_ROUND_PLUSINF);
echo "GMP_ROUND_PLUSINF: " . gmp_strval($remainder2) . "\n";

// 負の無限大方向への切り下げ
$remainder3 = gmp_div_r($a, $b, GMP_ROUND_MINUSINF);
echo "GMP_ROUND_MINUSINF: " . gmp_strval($remainder3) . "\n";

/*
出力:
GMP_ROUND_ZERO: -2
GMP_ROUND_PLUSINF: 3
GMP_ROUND_MINUSINF: -2
*/
?>

実践的な活用例:大きな数値の剰余演算

暗号化アルゴリズムや数論では、非常に大きな数値の剰余演算が必要になることがあります。

<?php
// 非常に大きな数値の剰余演算
$large_number = gmp_init("98765432109876543210987654321098765432109876543210");
$modulus = gmp_init("123456789");
$remainder = gmp_div_r($large_number, $modulus);

echo "余り: " . gmp_strval($remainder);
// 出力: 余り: 69112635
?>

モジュロ演算(gmp_mod)との違い

gmp_div_r と似た関数として gmp_mod がありますが、両者には重要な違いがあります:

  • gmp_mod は常に非負の余りを返します(数学的なモジュロ演算)
  • gmp_div_r は丸めモードに応じて正または負の余りを返します
<?php
$a = gmp_init("-17");
$b = gmp_init("5");

$remainder = gmp_div_r($a, $b);
$modulus = gmp_mod($a, $b);

echo "gmp_div_r: " . gmp_strval($remainder) . "\n"; // 出力: -2
echo "gmp_mod: " . gmp_strval($modulus) . "\n";     // 出力: 3
?>

注意点

  1. ゼロによる除算: 除数が 0 の場合、警告が発生し処理が中断されます。
  2. GMP オブジェクト: PHP 7.2 以降では、GMP リソースではなく GMP オブジェクトが使用されます。
  3. 符号付き数値: 負の数を扱う場合は丸めモードの選択が重要です。異なる丸めモードで異なる結果が得られます。

関連する GMP 除算関数

  • gmp_div_q: 除算の商を返します
  • gmp_div_qr: 商と余りの両方を配列で返します
  • gmp_mod: 常に非負の余りを返します

まとめ

gmp_div_r 関数は、PHP で大きな整数の除算における余りを正確に計算するための強力なツールです。特に暗号化や数論などの分野では、精密な余り計算が必要になることが多く、この関数の正確な使い方を理解することは重要です。

丸めモードの違いによる結果の変化を理解し、自分のアプリケーションに適した設定を選択することで、より柔軟で正確な計算が可能になります。大きな整数を扱う必要がある場合は、GMP 拡張モジュールとその関数群を積極的に活用しましょう。

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